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鏡石の鹿島神社参集殿で
『 野口和洋 木口(こぐち)木版画展 』 が開催中。
趣あるすてきな会場です。
野口和洋さん(野口工作舎)の初個展に伴い、
ここで、和洋さんの作品について、少しずつ紹介していきます。
野口和洋 木口木版作品 1995年
野口和洋 木口木版作品 1996年
野口和洋 木口木版作品 1998年~2002年
今回は、2002年以降制作作品の作者による作品解説を紹介します。
かぼちゃと風船画伯 1946年の谷中安規
谷中安規は、戦前の昭和を代表する版画家として、
棟方志功とともに奇才と並び称されながらも、
窮乏のうちに餓死するという悲惨な最後を遂げました。
しかし、安規は、
風船画伯、幽霊男、漂泊の詩人、愛と幻想の版画家など、
たくさんのニックネームを持っていて、
堀口大學をはじめ、佐藤春夫、内田百間など、
多くの文人、詩人に愛されました。
安規は、世話になったお礼に、
掃除、子守りなどをしながら、居候して、
風船のように、フワリフワリと渡り歩きました。
子供たちは、安規によくなつき、ボソボソと小声で話す、
小柄で静かな男だったそうです。
終戦の1946年、焼け野原の東京で、
植えたかぼちゃで何とか生き延びて、
新たな版画を作ることを夢見ていた安規の
見果てぬ夢を版にとどめました。
中原中也の肖像
Portrait Chuya-Nakahara
( DMの作品 )
昭和11年、中原中也に突然の不幸が襲う。
愛息文也が病気で亡くなってしまう。
中原の悲嘆は、甚だしく、文也の遺体を抱いて離さず、
なかなか棺に入れさせなかったと伝えられている。
詩人として、父として、
中也は、子どもの死という打撃に耐えられなかった。
悲しみのどん底から這い上がれずにいた中也は、
やがて神経を病み、間もなく病床についてしまう。
文也の死後、中原自身の生命も、1年ともたなかった。
30歳という短い生涯であった。
青春が終わり、
新しい理性と成熟の年代に入ろうとする直前の死であった。
逸見猶吉の肖像 Portrait Yukiti-Henmi
大正12年、逸見は、ランボーを原語で読み、
宿命的な出会いを果たしている。
このランボーから詩人猶吉が生まれ、やがて「日本のランボー」となる。
翌年の昭和元年のはじめ、詩人逸見猶吉は、草野心平と出会う。
心平23歳、猶吉19歳。
ともに、気が合い終生のつきあいとなる。
「もうその晩、われわれの生涯はうんもすんもなく決定された。
彼にとっても自分にとっても同じような、二つを繋ぐそんな電気が
お互いの肉まで流れあった気持ちだった。
その時二人は詩人としてではなかったのだが、
詩人であったことが二重の機縁になったことは事実であろう」
と心平は記している。
しかし、戦争という時代の波に飲み込まれ、昭和12年、
逸見は、満州に渡り、敗戦後の昭和21年、混乱の中で、病死し、
彼の妻と娘も引揚途中に亡くなる。
逸見猶吉の短い生涯は、いたましいものだった。
彼の中のランボーは、何処に行ってしまったのか。
昭和27年の「猶吉忌 1952」の寄せ書きで、
心平が「逸見よ、会いたい。な。」と書いた文字は、
悲しみに満ちている。
靉光(あいみつ)の肖像 Portrait Mitsu-Ai
今でもその絵を見た時の印象をよく覚えている。
高校生だった私は、画集で「眼のある風景」を見た時、
緑色に光る異様な眼の魅力に、すぐ虜となった。
そして、その絵を描いた靉光という謎めいた名前が、
日本人とは思えず、一層、絵を魅力的なものにした。
だいぶ後になって、は、まぎれもない日本人であり、
夭逝した天才的な画家であることを知る。
靉光は、39歳という若さで、戦争により命を奪われる。
いつ召集になるかもしれない自分の運命に逆らい、
残された時間を惜しむように、
必死に絵を描いていたのである。
不幸な予感は、現実となり、
召集された靉光は、中国へと送られる。
そして、二度と日本にもどることはなかったのである。
東京国立近代美術館にある1944年の靉光の自画像は、
最後まで、不合理な時代に挑み続けた己の姿を
科目でありながら、強靱な輝きを見事に描いている。
私は、今、平和な時代に生まれ、
木口の版面を刻める時間を幸せに思う。
靉光の生きた時代とは、比較にならないけれど、
私に与えられた時間で、
現代の闇を『ビュラン』の切っ先で照らし出せればと願っている。
*作品写真および作品に添えられていた解説文は、すべて、
作者野口和洋さんの許可のもと、このBLOGで紹介しております。
野口和洋 木口木版画展
平成19年4月22日(日)~4月30日(月)
午前10時~午後6時 会期中無休
会場:
鏡石 鹿島神社 参集殿
福島県岩瀬郡鏡石町鹿島379
TEL:0248-62-1670
野口さんとのご縁・・・
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